大宮賣神社
乙女神社より
鱒留川(ますどめがわ)
をくだると
竹野川(たかのがわ)
へと合流します。
そこから今度は
竹野川をのぼってゆくと
大宮町がひろがっています。
![大宮売神社の鳥居](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/gate-omiyame.jpg)
ここには
丹後国二宮といわれる
大宮賣(おおみやめ)神社
があります。
丹後国一宮である
籠(この)神社
に次いで
京丹後では
重要な神社なのでしょう。
![大宮売神社の参道](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/road-omiyame-768x1024.jpg)
籠神社の奥宮である
眞名井(まない)神社と
久次岳(ひさつぎだけ)
を結んだ直線の
ちょうど
真ん中あたりにあります。
二座
神社というのは
主祭神は1柱のみ
というのが一般的ですが
ここは
主祭神が2柱であり
大宮賣神(おおみやめ)
若宮賣神(わかみやめ)
という女神を祀っています。
ですから正式名称は
大宮売神社二座(おおみやめじんじゃにざ)
なのだそうです。
![大宮売神社の社号碑](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/statue-omiyame-768x1024.jpg)
大宮賣神
大宮賣神は
古事記・日本書紀には
登場しないものの
古語拾遺(こごしゅうい)
という平安時代の神道書には
天照大神の侍女
として登場するといいます。
其殿令大宮賣神侍於御前
古語拾遺一巻
是太玉命久志備所生神如
今世内侍善言美詞和君臣間令宸襟悦懌也
古語拾遺によれば
天岩戸(あめのいわと)から
出てきたばかりの
天照大神の新宮に
仕えた女官の神だといいます。
![大宮売神社の奉納品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/pic-omiyame-img2.jpg)
内侍(女官)たちが
麗しい言葉によって
君と臣の関係をやわらげ
御心を喜ばせるよう
とりはからったようです。
祭礼を司っていた
太玉命(ふとたま)の娘
といわれています。
![大宮売神社の参道](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/road-omiyame-768x1024.jpg)
宮中八神
皇居には
宮中八神(きゅうちゅうはっしん)
という8柱を祀る
神殿(しんでん)があり
皇室をはじめ
国家を守護する神として
祀られているといいますが
大宮賣神は
宮中八神のひとりとして
いまでも皇居の神殿に
祀られているといいます。
![大宮売神社の境内](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/shrine-omiyame-img2.jpg)
女官や宮殿を
神格化した存在といわれ
調和を保つ神ととされることから
旅館や百貨店など
接客業の守護神としても
信仰されているといいます。
造酒司
大宮賣神社は
社名に「大宮売」とはいっている
唯一の式内社だといいます。
創建時期は不明
とされていますが
すくなくとも
延喜式の書かれた
平安時代にはすでに
名神大社という社格で
厚く祀られていたようです。
ですから、
宮中の大宮賣神の元宮
ともいわれるそうです。
![大宮売神社の境内](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/shrine-omiyame-img3.jpg)
また酒や酢など
醸造を司った役所である
造酒司(みきのつかさ)
にも祀られていたらしく
お酒に関わる神
でもあるようです。
ほかに、
大宮賣神を祀る神社といえば
伏見稲荷大社などがあります。
![大宮売神社の神池](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/pond-omiyame.jpg)
オオミヤヒメ
ホツマツタヱにも
オオミヤヒメは登場します。
天照大神の
12人の妃のひとり
であり
東の局の筆頭である
オオミヤヒメ(ミチコ)
というかたです。
天照大神との間には
イキツヒコネ(活津彦根命)
をもうけました。
イキツヒコネといえば
彦根(ひこね)の語源
となったかたです。
![大宮売神社の石灯篭](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/lantern-omiyame-768x1024.jpg)
オオミヤヒメ(ミチコ)は
妹である
タナハタヒメ(コタヱ)
とともに入内したようです。
「タナハタ」とは
「棚機」のことであり
機織りに長けた方だったのでしょう。
オオミヤヒメが
大宮賣神であり
タナハタヒメが
若宮賣神でしょうか?
![大宮売神社の手水](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/water-omiyame.jpg)
酒作りや機織りというと
羽衣伝承にも通じそうですが
おふたりにも所縁がある
のでしょうか?
オオミヤヒメの父は
ヤソキネといいます。
豊受大神の跡を継いで
日高見国(ひたかみ)
を治めたかたで
神皇産霊尊(かんみむすび)
とも称えられています。
日高見国とは
東北地方のことですから
オオミヤヒメもタナハタヒメも
東北で生まれたと考えられます。
だからこそ
「東」の局として
入内したようです。
ですから、おふたりは
京丹後とはあまり
関係がないように思われます。
![大宮売神社の拝殿](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/main-shrine-omiyame.jpg)
マスヒメ
ホツマツタヱによれば
豊受大神は晩年になると
京丹後に暮らしたといいます。
そしてそのまま
京丹後でなくなったそうです。
天照大神は
豊受大神を弔うために
京丹後の地へ訪れると
そのまましばらく
滞在したといわれます。
このとき
天照大神の世話係として
北の局にあたる
モチコ・ハヤコ・アチコ
が派遣されました。
北の局というように
ネ(根・北)国の出身ですから
京丹後の地にも
通じていたのでしょう。
![大宮売神社の扁額](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/rope-omiyame-768x1024.jpg)
モチコは
マスヒメ(モチコ)
といいます。
天照大神が
宮津に滞在している間に
天照大神とのあいだに
長男のホヒ(天穂日命)
をもうけました。
ハヤコはモチコの妹であり
コマスヒメ(ハヤコ)
といいます。
天照大神が
宮津に滞在している間に
天照大神とのあいだに
長女タケコ(田心姫神)
次女タキコ(湍津姫神)
三女タナコ(市杵島姫神)
をもうけました。
内侍の神格化が
大宮賣神というのなら
大宮賣神社で祀られている
大宮賣神とは
マスヒメ(モチコ)
のことであり
若宮賣神とは
コマスヒメ(ハヤコ)
のことかもしれません。
![大宮売神社の摂社](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/sub-shrine-omiyame.jpg)
藤社神社の地にも
「鱒(ます)」留川
が流れていたり
「摩須(ます)」という
氏族が暮らしていたことから
マスヒメ・コマスヒメ
の地と考えられそうです。
大宮賣神社の地とは
モチコ・ハヤコ・アチコ
が滞在した宮跡や
産屋の地であった
のかもしれません。
けれどものちに
モチコ・ハヤコは
反乱軍となって
朝廷と敵対してしまったので
おふたりの名で
祀るわけにはいかず
かといって
天照大神の御子の母を
祀らないわけにもいかず
女官の神名である
「大宮賣」として祀られた
のではないでしょうか?
![大宮売神社の碑](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/statue-omiyame-img2-768x1024.jpg)
さらにいえば
アチコという妃は
カダの娘であり
伏見稲荷大社にも
深く関わることから
伏見稲荷大社で祀られる
大宮能売大神(おおみやめ)とは
アチコのことかもしれません。
周枳
この地は丹波郡の
周枳(すき)郷にあたる
といわれています。
![大宮売神社の奉納品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/pic-omiyame.jpg)
天皇陛下が即位されたときの
大嘗祭(だいじょうさい)では
悠紀(ゆき)殿
主基(すき)殿
にそれぞれ
供物が捧げられるのですが
かつての大嘗祭において
主基殿に稲を収めるという
主基田に選ばれた地から
周枳(すき)
という地名になった
といわれるようです。
この地が選ばれたのもまた
大宮賣神社があったから
のようですね。
![大宮賣神社の地名](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/signboad-omiyame-768x1024.jpg)
古代祭祀場
創建は不明
とされていますが
ご由緒によれば
崇神天皇7年に
詔勅によって
大宮売神を祀り
崇神天皇10年に
丹波道主命(たんばみちぬし)
が若宮売神を祀ったとあります。
![大宮売神社の由緒](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/info-omiyame.jpg)
古代から
祭祀が行われていたことを
示すかのように
大宮賣神社の境内からは
弥生時代前期の遺跡が
見つかっているといいます。
当時からすでに
集落があったことは
違いないようです。
![大宮売神社の古代祭祀場の石碑](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/statue-omiyame-img3-768x1024.jpg)
本殿裏の神苑も
禁足地となっていました。
神主さんの
お話しによれば
文化というのは
川の河口付近と
上流付近で発展する
のだそうです。
大宮町のあたりは
竹野川の上流にある盆地
であることから
はるか古代から
栄えていたといいます。
![大宮売神社の神苑](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/forest-omiyame.jpg)
出土品
古代史に興味があることを
神主さんにお伝えすると
社務所の奥に
展示されている
境内の出土品を
見せていただきました。
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-info-omiyame-768x1024.jpg)
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame.jpg)
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame-img2.jpg)
弥生時代には
すでに渡来した人々による
暮らしがあり
稲作や呪術的な祭祀で
権力をもった豪族が
政をおこなっていたといいます。
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame-img3.jpg)
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame-img4.jpg)
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame-img5.jpg)
しかしながら
こうした出土品と
歴史家との間には
見解の相違もあったらしく
はやばやと
文化財に指定されてしまい
いまでは
発掘調査もできない
のだそうです。
![大宮売神社の境内出土品](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/earthenware-omiyame-img6.jpg)
弥生時代だけではなく
古墳時代から
近現代まで
さまざまなものが
展示されていました。
![大宮売神社の翁面](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/mask-omiyame.jpg)
![大宮売神社の扁額](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/pic-omiyame-img3-768x1024.jpg)
![大宮売神社の展示](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/pic-omiyame-img4.jpg)
京丹後には
6000基もの古墳がある
といいます。
浦嶋神社の
神主の奥さまからも
うかがいましたが
太古より京丹後には
渡来の文化や
造船・稲作・製鉄
などなどで栄えた
強国があったそうです。
![大宮売神社の境内](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/sub-shirine-omiyame-img2.jpg)
すると
大宮賣神社の
神主さんから
「浦嶋神社の神主は
親戚なんですよ」
とうかがいました。
![大宮売神社の摂社](https://navihico.com/wp-content/uploads/2024/06/tree-omiyame-768x1024.jpg)
つづけて
「宮津にある
和貴宮(わきのみや)という神社も
親戚が宮司をしていますので
よかったら行ってみてください」
とうかがいました。
このようにうかがっては
訪ねないわけにはゆきません。
ということで次は
和貴宮神社へと続きます。
所在地
〒629-2503
京都府京丹後市大宮町周枳1020
京丹後めぐり15
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