検証ほつまつたゑ
ホツマツタヱ研究の専門同人誌・
『検証ほつまつたゑ よみがえる縄文叙事詩』の
第119号(令和4年2月号)に
掲載していただきました!
本当にいつも、
ありがとうございます🥰
今回は、連載となっていて
前回(118号)のつづきです。
火の神といわれている
カグツチ(火之迦具土神・軻遇突智)
について探っています。
こちらにも転載しますので
よろしければご覧くださいませ。
カグツチ考 その2
前号では、天照大神の弟・
ソサノヲ(素戔嗚尊)は
母神・イサナミと
火神・カグツチの子ではないか?
という話をしました。
今号では、もしそうだったなら
なにが起こるのかを考えてみます。
まずは、
カグツチの血統からみてゆきます。
イサナギ・イサナミの子ではない
というのは、
前号をご参照いただけたらと思います。
炭焼き
カグツチの出生地は
三重県熊野市有馬にある
産田(うぶた)神社
といわれています。
イサナミの墓所とされている
花の窟(はなのいわや)神社
のすぐちかくです。
有馬には
ほかにもおもしろい伝承があり
「縄文時代晩期に
渡来系の炭焼き職人たちが
出雲から移住してきた」
というのです。
みくまのの みやまぎやくを
ホツマツタヱ 5アヤ
のそかんと うむほのかみの
かぐつちに
「やまぎやく(山木焼く)」を
「炭焼き」とすれば、まさしく
火をつかう職人集団が
「カグツチ」という役職に
任命されたともとれそうです。
かれらは
出雲(いずも)からきた
のでしょうか?
出雲
出雲といえば
ソサノヲがひらいた国
といわれます。
出雲国一宮には
出雲(いずも)大社と
熊野(くまの)大社が
ならぶことから
出雲と熊野の関係は深い
といわれています。
熊野大社は
日本火出初之社(ひのもとひでぞめのやしろ)
といわれ
「火」の発祥の神社
だそうです。
出雲の「国引き神話」では
ソサノヲの子孫ともいわれるかたが
遠方の島々を綱で手繰りよせて
島根半島をつくったといいます。
そのさい、
西は三瓶山(さんべさん)
東は大山(だいせん)
に綱をかけたそうです。
どちらも巨大な火山であり
石川県の白山(はくさん)から
九州の雲仙(うんぜん)にいたる
「大山火山帯」に属するようです。
火山の噴出物が
川で流され堆積して
島根半島と
地続きになったことが
国引き神話の
由来でもあるようです。
大山(だいせん)は
火神岳(ひのかみたけ)
ともいわれ、かつては
カグツチを祀っていた
といいます。
大山
「大山」といえば
神奈川県には
大山(おおやま)があり
オオヤマスミ(大山祇神)
一族の本拠地といわれています。
富士山の旧名である
「カグヤマ(橘山)」
を管理したことから
オオヤマスミ一族には
「カグ」の名がついていた
ようです。
「大山」と「カグ」が結びついて
出雲の「大山」にも
「カグツチ」が祀られたとすれば
カグツチもオオヤマスミ一族
だったのでしょうか?
オオヤマスミは名家であり
天照大神の后・
セオリツヒメ(瀬織津姫)や
天孫ニニキネの后・
コノハナサクヤヒメ(木花開耶姫)を
輩出しています。
トの尊
「ト」の教えの象徴である
「橘」にかかわることから
原初神・
クニトコタチ(国常立尊)の8人の皇子
ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メのうち
本家となる「ト」の尊の
遠縁にあたるのかもしれません。
「ト」の尊は
初代:クニトコタチ
2代:クニサツチ
3代:トヨクンヌ
4代:ウビチニ・スビチ
5代:ツノクヰ・イククイ
と継いできたのですが
6代:オモタル・カシコネ
で断絶したといいます。
そこで、8皇子のうち
「タ」の尊の子孫を結んで
7代:イサナギ・イサナミ
として治世をつないだそうです。
こうして生まれたのが
天照大神(アマテル)です。
血統がかわったために、ここを
歴史の節目としてみるようですね。
オモタル
トの尊の6代目にあたる
オモタル・カシコネは
国を治めるために
日本中をめぐったといいます。
その最期に訪れたのが
出雲の地だったようです。
古代出雲の中心地でもあった
意宇(おう)には
面足(おもたる)山
という公園があり
阿太加夜(あだかや)神社
が祀られています。
ご祭神は
アダカヤヌシ
という女神ですが、
オモタル・カシコネも
配神として祀られているようです。
大山(だいせん)の西のふもとにも
阿陀萱(あだかや)神社
が祀れていて
ご祭神は
アダカヤヌシ
という女神だそうです。
こちらは、
大山祇命があわせて
祀られているようです。
カグツチを祀る愛宕神社の
「愛宕(あたご)」は
「仇子(あだこ)」から
きているそうですが
「アダカヤ」も
「アダ」は「仇」
「カヤ」は「夜伽・産屋」とよめば
「仇子を産み養った母」
の姿があらわれてきます。
想像力を羽ばたかせるなら
出雲の地で、オモタルと
オオヤマスミの血をひく女性が
不義をおかして生まれたのが
「カグツチ」だった
のかもしれません。
カグツチは
オモタルの隠し子
というわけです。
出雲の
木俣神(このまたかみ)
の伝承とは
カグツチの出生秘話が
かたちを変えて伝わったもの
ではないでしょうか?
もしくは、
「火神」というように
「ヒ」の尊の末裔としても
よいかもしれません。
出雲の地は
「ヒカワ」ともいわれ
「ヒ(日)」の沈む地
とされていたようです。
さらに
『ほのかみの かぐつち』
とあるように
「ホ」の尊の末裔とする
こともできるでしょうか?
カグツチには
トホカミヱヒタメの血が色濃く
混じっていたのかもしれません。
もし、そうだったとすると
イサナギの血を継ぐ天照大神と
カグツチの血を継ぐソサノヲと
どちらが正統になるのでしょう?
火神と日神
出雲の地では
カグツチやソサノヲが
「ト」の尊の血をひくものとして
崇敬されていたのかもしれません。
大山のカグツチとは
富士山の天照大神とおなじく
「火神」と「日神」で
対になっていたのでしょう。
富士山と大山の
緯度が同じというのも
気になるところです。
だとすれば、
天照大神の世におこった
「ハタレの乱」というのは
天照大神を皇統とするひとびとと
ソサノヲを皇統とするひとびとによる
国家を二分する動乱だった
のではないでしょうか?
いさおしならは
天照大神の妃である
モチコ・ハヤコ姉妹は
いさおしならは
ホツマツタヱ 7アヤ
あめがした
『 すべてがうまくいったなら 天下はあなたのものです 』
といって、ソサノヲの
心を動かしたといいます。
しかし、
これも深読みをすれば
『 本来であれば あなたがアマカミなのです 』
と諭したようにもみえます。
ソサノヲが悩まされた
『しむのむし』とは
『血統への執着』だった
のかもしれません。
ハタレ(反乱軍)の本拠地が
出雲だったというのも
関係しているのでしょう。
モチコ・ハヤコ姉妹の
出身地でもあり
おふたりは
ソサノヲの出生を知っていた
のかもしれません。
ハタレの武将・
ハルナハハミチは
捕虜となったとき
このような証言をしています。
やつかれに ねのますひとが
ホツマツタヱ 8アヤ
をしえけり いさおしならは
くにつかみ これそさのをの
みことなり
ハタレの首長は
ソサノヲの名をあげて
『成功すれば、一国をまかせる』
とハルナハハミチを
そそのかしていたようです。
ソサノヲの名は
それほどの影響力があった
ということでしょう。
(ハタレの総数・七十万九千人と、
シムノムシを断ったソサノヲに由来か?)
やくもたつ
動乱のあいだ
ソサノヲは流刑中で
身を隠しており
ハタレ(反乱軍)に合流することは
なかったといいます。
放浪生活のなかでソサノヲは
辺境のツルメソとの出会いによって
ながらく自身を苦しめていた
『しむのむし』を鎮めたようです。
そして、最愛の妻・
イナタヒメ(稲田姫)
にめぐり逢うと
ソサノヲもまた
ひとびとが豊かに安心して暮らせる
社会を願うようになったといいます。
そこで、ソサノヲは
イブキドヌシ率いる皇軍のもとにくだり
みずからの手でハタレを斬ったといいます。
ソサノヲの正統性を信じるひとびとを
ソサノヲみずからが否定することによって
動乱を鎮めたというのです。
これが
『やくもたつ』
だったのでしょう。
やゑがき
剣をふるった力はそのまま
争いを鎮める力、防衛の力、
自衛の力としての
「垣根」に対応させて
『やゑがき』となり
この国を外敵から守る存在
となったようですね。
その根底には
愛する妻や子を守るという
平和と安寧の願いがあり
ソサノヲの御心のすばらしさには
圧倒されるばかりです。
ソサノヲの血統はイソヨリヒメから
タマヨリヒメ(玉依姫)へと継がれ
天照大神の玄孫・
ウガヤフキアワセズ(鸕鶿草葺不合尊)
と結ばれて
初代・神武天皇
を産んだようです。
ソサノヲの血と
天照大神の血がひとつになって
あらたな世代がはじまった
というのも、
歴史のスペクタクルかもしれません。
さいごに、出雲といえば
「製鉄」がおこなわれていた地であり
ヤマタノオロチというのも
製鉄に関わるという話もあるようです。
カグツチの火というのは
製鉄の火のことだった
のかもしれません。
「火」から生まれた
「剣」によって
ソサノヲが出雲を治めたという
父と子の物語もみえてきそうです。
(おわり)
覚書き
ご拝読ありがとうございます。
ソサノヲが
イサナギの子ではなく
カグツチの子であり
ハタレの動乱とは
天照大神を皇統とするか
ソサノヲを皇統とするか
国を二分する争いだった
という解釈は
歴史や神話の可能性を考えるうえで
とても面白いかとおもいます。
歴史とは
勝者によって残されたもの
だといいますから
敗者たちがみてきた
消されてしまった過去を
考えることもまた
歴史の愉しみ方のひとつ
ではないでしょうか?
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